コラムI バンドの運営について(一)バンマス職

(Dave談)

1.バンマスやりたい?

ご存知の方もおられるかと思いますが、
僕は大学の頃からバンドやっていまして、
大学で組んでいたコピーバンドでも
卒業後に組んだスラッシュ・メタル・バンドでも、
そして現在のDEEP UNDERWATERでも、
僕がバンマスやらせていただいているんですね。

世の中には仕切りたがる奴と
そういうのを面倒だと思うタイプがあるようでして、
子どもの頃は誰だって前者だと思うのですが、
いつからか皆が皆、イニシアチブをとることに執着しなくなるものです。

バンドの運営って、
会社のように社長だから収入が他よりも多くなるというような
メリットがあるわけでもないですし、
むしろ雑用が増えるんですよ(笑)

それでも尚、バンマスをやりたいか?

あるいは、そうまでして「やりたいこと」があるか?

これがバンマスを買って出る分水嶺だと思うのです。

2.初バンマスの教訓

僕が最初にバンドを組んだのは1995年のことで、
高校からの同級生と某D大学のFSSというサークルに入って、
メガデスのコピバンをやり始めたんですが、
バンドの運営って思っていたよりもうんと難しかったデスね。

正直、僕の最初のトライは1年で破綻しました。

というのは、
親友だったリードギターがバンドを辞めると言い始めたんです。

それと前後してこれまた高校の同級生だったベースも
「音楽性の違い」から辞めてしまいましてね。

そうなると残るは僕とドラムの二人だけ、
2人でバンドなんか出来ませんから、崩壊の危機です(笑)

そこで「俺はDaveともうちょっとやってみるわ」と言って残ってくれた恩人が、
実は現在のDUWのDrであるKIMでした。

3.音楽性は完全には一致しないのがバンドの宿命

それで、そこからはちょっとバンドに関する考えが変わりましたね。

単に音楽好きが集まって一緒に演奏したらバンドになるっていうほど
簡単ではないっていうことに、ようやく気づきました。

まずはメンバーを自分の力で探さなければならないし、
そのメンバーのモチベーションをあげなければならない。

「音楽性の不一致」という言葉をよく耳にしますが、
そもそも完全な音楽性の一致なんてまずありえないのです。

そりゃあ殆ど音楽を聞いたことのない中学生だったら
全員で「ラルクをやろう!」ってことになるかもしれませんが、
無限に存在する音楽の中から自分と全く同じ嗜好の人間を探すなんて不可能でしょ。

それこそ同じ環境で育った兄弟だって
完全には一致しないだろうと思います。

勿論、DEEP UNDERWATERだって本当は嗜好はバラバラです。

4.気持ちのシンクロ

じゃあどうするか。

音楽性は完全には一致しなかったとしても、
気持ちはちゃんと一致させることができると学んだんです。

上の話の続きですが、辛うじてバンドの解散を免れた僕は、
ちょうど新入生の入ってくる時期だったので、
1年生のベーシスト全員に電話しました。

まあ本気ですよね、
意地でも後任のベースを見つけてやるぞって思ってね。

それで話に乗ってきたのが、
現在も親友のJrって男(※因みにJinはJrの紹介でした)

でして、彼は高校球児だったせいか体育会系で、
身長もすらりと高くておまけに加藤晴彦似の抜群のイケメンと来た(笑)

初めて現れたとき、こいつは「買い」だって思いましたね。

その頃からですね、体育会的なノリが好きになったのは。

とにかく負けず嫌いな僕は、
バンドを辞めたかつての親友を見返してやろうと
KYなほどストイックな姿勢になっていて。

Jrはもともと高校球児ですから、
目標を設定されると一目散なタイプで、
彼のそうした姿勢がバンド全体にも波及しました。

これが好循環なんですよね。

どんどんと 「チーム」としての一体感が生まれて、
気持ちがシンクロしてくる。

それでようやく「バンド」になるのだと僕は学びました。

バンマスの第一の仕事は、
皆の気持ちが纏まるように、
モチベーションを高めていくことにあると僕は今でも考えています。

誰かが辞めてしまうということは、
残念だけど究極的にはバンマスの力不足なのでしょう。

5.人間関係の調整

それから政治力も必要ですよね。

政治力なんていうと随分と大げさですけど、
要するには微妙な人間関係のコントロールが不可欠っていう話です。

ところが正直に申しますと、
僕はこの人間関係という奴が元来苦手でして。

知らない人と話すのも不得手だったし、
更に知らない相手と仲良くなるなんて不得意中の不得意でした。

当時の僕はそのせいかとても排他的でしたし、
顔に「傲慢」と書いてあるようなタイプで(笑)

しかしね、ギターも探さなくてはいけない訳ですよね。
当時、KIMはサークル内でもう一つバンドを組んでいまして、
そちらの方のバンドも内紛?で空中分解しかけていました。

そこでまず僕が行ったのは、相手のバンドのベースになること。

今だから言えますが、
実は初めからそのバンドにベースで参加する気はなくて、
ギタリストの彼を手に入れるための工作でした。

一回だけ3人でライブやって、人間関係を築いたところで
一緒にMEGAHORN(当時僕がやっていたコピバン)やらないかと誘ったわけです。

そのときは無意識だったのですが、
今考えてみると、それは僕が必死だったが故に、
彼の「顔を立てる」という政治手腕を使ったわけですね。

僕のことを信用してもらって、
好きになってもらえば、
多少音楽性が違ったとしても一緒にやろうという気持ちにもなる。

それまでロクに話したこともない相手でしたが、
マテオとは急速に仲良くなりました。
(現在もMEGAHORNのメンバー4人は大親友です)

きっと、お互いに仲良くなろうという意識があったからでしょうね、
それがいつの間にか本当に親友になっていて、
本心から僕は彼のギタープレイを信頼するようになり、
こうなれば上に書いた好循環が勝手にバンドを離陸させてくれます。

そういうわけで、
やはり人間関係に裏で気を遣って動かしていくというのも、
バンマスの重要な仕事だと思うのです。

バカでなければ、メンバーもそういう気持ちを汲み取って
お互いに関係を改善していくように動きますし、
これまた例の好循環のマジックが働いて、
結束の固いバンドになる。

6.メンバーの個性を伸ばすこと

各話が微妙にリンクしてくるのですが、
モチベーションを高めるためには
バンド全体の力量を上げていかなければならなくて、
そのためには各構成員を伸ばさなければなりません。

大人ですから勝手に練習もするでしょうが、
しかし人間自分の長所や短所は意外と見えないもの。

誰かに言われてはじめて気付くということも稀ではありません。
しかしこの指摘が難しいんですよね。

プロじゃないんですから、
粗を探せばいくらでも見つかります。

自分のことを棚にあげて言うなんてなんだか失礼な気もするし…。
しかし、やはり言うべきは言わねばなりません。

たとえ僕よりもギターの巧いマテオやSIMONであっても、
やはり「リスナー」としてみればここはこうした方が…
という部分も見つかるものです。

それを言われてもムカッとさせないで、
よしもっと練習してやろうと思わせるために、
僕は次の2点を意識しています。

1つ目はまず相手のファンになること。

プレイを好きになれればベストなんですが、プレイに不満だらけなら、
まずはその人の個性を好きになることからはじめます。

もし好きになれそうな個性もなかったら??

そんな相手とはバンドを組まんことです(笑)

例えば僕は本心からSIMONのギターソロを気に入っているんですね。
ファンだからこそ、より良くしたいから
「あの出だしはちょっと早すぎるんじゃないか」とか
「なんか後半がワンパターンな感じがする」とか
勝手なことを言うし、
言われた方もファンの意見にキレるアホはいないわけです。

2つ目は優先順位をつけることですね。

上にも述べたように、
改善すべき場所なんていくらでも出てくるわけですが、
一方で改善を迫られる方はそんなの全部を改善するなんてとてもじゃないが出来ない。

だから、バンドにとってどこを最初に改善してもらえば
最も費用対効果が高いかを考えるわけです。

例えば、ドラムのおかずがイマイチなところと、
全体的にモタリ気味の曲があったなら、
当然後者の方を徹底して改善してもらうようにしなければ。

いくつも言われれば鬱陶しいだけでしょうが、
この部分だけ何とかしてくれといわれれば、
じゃあその部分だけは頑張るかと動いてくれそう。

7.メンバーを褒めること

これまた上の政治力の話やら個性を伸ばすことと繋がってきますが、
やっぱり褒められて嫌な気持ちになる奴っていないと思うんです。

いいと思っていない部分を褒める必要はありませんが、
結構日本人っていいなと思っていても言わずに置くことがありませんか?

欠点を全て指摘していては喧嘩になりますが、
長所はいくら褒めたって問題にはなりません。

ですから、
それこそ女を口説くイタリア人くらいの勢いで褒めていいと思うんですよね。

不思議なもので、
人間は期待をかけられると裏切りにくくなるものですから、
褒めた部分はどんどんと良くなっていきます。

そうやってギターソロに定評のある奴はどんどんと巧くなっていくし、
皆から美人だと言われる女子はどんどんと綺麗になっていく…
MJ☆みたいにね(笑)

8.誰よりも働くこと

って言うほど僕は仕事をしてないわけですが(汗)、
もしバンマスってのはふんぞり返ってれば「リーダー」になれると思う人がいたなら、
それは「赤道が一番南だと思ってた」ってくらい大間違いです。

誰かが常にいい提案をしてくれて、
スタジオの予約やらライブハウスとの折衝やらをやってくれたら
こんなにありがたいことはないですが、
システムが出来上がるまでは放って置いても何も動かないんですよね。

そういうときに率先して動かなきゃいけないのがバンマスのお努め。

ねえねえ、ライブやらない?
と提案してはこんなライブハウスがあるから行ってみようと声をかけ、
この日に練習しなければ間に合わないんじゃないかと言っては練習場を予約し
(DUWではJinが阿修羅のような働きをして支えてくれるので楽させてもらってます)、
ミーティングが必要じゃないかと提案し。

そんなの公平じゃないじゃないかと思いたくなるかもしれませんが、
それでいいんです。

だってバンマスなんやもん。

9.嫌な役をかぶること

それと、internalにもexternalにも嫌な役回りってのがあるわけですが、
これもバンマスの仕事だろうと僕は思います。

例えば対内的には誰かが言わなきゃならないってな場合には、
悪者にされそうなので、なるべきなら言いたくはないものですが、
これもバンマスの役回り。

あるいは全体がいいムードでだらけてるときに、
「うりゃあ気合入れろやあ」なんて言えば
ウザイ奴だなと思われますがこれもお仕事。

それから、体外的にはライブハウスで動員が少なくてお小言を頂戴するとか、
どうしてもメンバーの都合で直前キャンセルして怒られるとか、
そういう時もバンマスなら一歩前に出てお叱りを受けなければ。

ちゃうねん、
俺はちゃんとしろって言うてたのにコイツが…
なんて思うときもありますが、
全て「私の責任です」と受けなければ。

むしろ、嫌な役だからバンマスが引き受けるんですよね。

あ、僕はよく本当に自分が悪くてメンバーに叱られてますけどね(笑)

10.リスク管理

上の例でね、大学1年生の終わりにメンバー2人に抜けられたとき、
正直僕の中では青天の霹靂だったんですが、
今思うとそれはありえないよね。

そりゃあ事故とか転勤とか、
そういう理由で抜けられたなら仕方がないけど、
「音楽性の違い」でバンドを抜けるような話になったなら、
これは事前に察知しておかなければならないもの。

なんだか最近やる気がなさそうだなとか、
以前に比べて前向きな提案をしなくなったなとか、
しばしば練習を休むとか、
そういう分かりやすい兆候は出ているはず。

これが見つかったなら、
まずフォローに入るのは当然ですが、
しかしイロイロ試したけどどうやっても
修正が不能っぽいなあと考えたとき。

そのときは相手が脱退を言う前に先に
後任や今後のスケジュールについて考える必要があります。

ここら辺の判断は微妙なところですが、
19歳の僕のように、言われてからさてどうしようと
途方に暮れるのでは遅すぎます。

もしライブのスケジュールなどが組まれていたなら
先方に迷惑がかかりますし、
そうなったときに謝るのは脱退した人間ではなく、
ほかでもない自分です。

そうならないためにも、
代替案くらいは自分の中で暖めておかないとね。

勿論、そんな代替案を使わなくて済むようにするのが
バンマスの本筋としての務めなのですが。

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